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生きるのをがんばりたい

緊急入院していた

はじめに

僕は事業者に雇用されている労働者なので、労働安全衛生法に則って毎年の健康診断が実施されている。

去年の12月に健康診断を受けて、1月に結果が返ってきた。去年は親族が病気で亡くなったことを受けて検査項目を追加していたので、少しドキドキしながら結果を確認した。結果は追加の検査項目とは全然関係のない、心電図の要精密検査だった。

診療所で検査をしたところ大学病院への紹介状が書かれ、大学病院で検査をしたところ緊急入院となった。入院しながら検査を続け、最終的に手術をして持病が一つ増えた。

入院までの経緯

健康診断で心電図の要精密検査の結果が返ってきてから、ちょうど健康意識が高かったこともあってすぐに近所の循環器内科の診療所を受診した。

医師には健康診断の心電図検査で要精密検査になったこと、理由は連発性心室性期外収縮を認めるためであることを伝えた。医師によると心室性期外収縮というのは周期的な拍動でない心臓の収縮が起こることで、それが1発あるいは2発までの連続であれば問題ないが、3発以上になると命に関わる症状の可能性が高いとのことだった。連発性心室性期外収縮という文言だけでは2発なのか3発以上なのか分からないので、詳しい検査が必要になるとのことだった。期外収縮はいつ起こるか分からないので、24時間の心電図を測定するホルター心電図という検査で見つけることになる。また、健康診断を受けたクリニックから実際の心電図も取り寄せることにした。

健康診断を受けたクリニックからは数日中に心電図の取り寄せができたので、それを持って二度目の診察を受けた。診療所に向かう途中に自分で心電図を眺めていて察しはついていたが、健康診断で見つかったのは3発の心室性期外収縮ということが分かった。つまり、命に関わる症状の可能性が高くなった。ここで心室性期外収縮を引き起こす病気について詳しく教えてもらった。一つ目は狭心症など、心臓の血管に異常がある病気。二つ目は心筋症など、心臓の筋肉に異常がある病気。三つ目は、それ以外の不明な原因による病気。これらの病気の特定をするためには更に検査が必要になり、また、三つ目であれば命に関わることは少ない。たぶん大学病院で検査することになるかな〜という話がここであがった。

何にせよまずは詳しい心電図が必要ということで、予定通りホルター心電図検査が実施された。24時間と聞いて1日入院でもするのか?と思っていたが、日常生活での心電図を計測する必要があるため、手のひらほどの機器を取り付けて普段通りに過ごせばいいらしい。機器を取り付けた翌日、24時間の計測が終了したことを確認して機器が回収された。記録された心電図を医師が確認して結果を伝えるため、次の診察は1週間後になった。

ところがホルター心電図検査の機器を返却した夜に、診療所から電話があった。ちょうど電話がとれなかったため翌日にかけ直したところ、検査結果について伝えたいことがあるのでなるべく早めに受診してほしい、という話だった。医者からそんな電話かかってくることある??というか夜の20時半(前日とれなかった電話は20時半にかかってきた)にまだ仕事してるのすごいな…などと妙にずれたことを考えたのを覚えている。早めにということなので、翌日に診察の予約を入れた。

三度目の診察ではホルター心電図検査の結果を教えてもらった。3発どころか十数発の連発性心室性期外収縮が認められたため、明日には紹介状を用意するので大学病院を受診してほしい、とのことだった。ただ、不整脈に強く医師もよく知っている大学病院か、無難に一番近い大学病院か、どこを紹介するのか少し悩んでいるようだった。悩むほど病院があるなんてやっぱ都会(東京都のことです)は田舎(福島県のことです)とはちげえな〜と思った。日本でもトップクラスに不整脈に強い大学病院にかかるような重篤な症状ではなく、大学病院であればどこでもしっかり治療してくれるとのことだったので、通いやすい一番近くの大学病院への紹介状を用意してもらった。

診察の予定の前に医者が電話をくれるほど緊急なんだ、と理解したので、翌日の紹介状をもらったその足で大学病院を受診した。初診は午前中に受付をしなければならなかったが、頑張って起きた。

大学病院ではまず医師からの診察を受けた。これまでの検査結果を踏まえて、血液検査と心エコー検査をすることになった。医師からは「急ぎで検査を入れましたので、すぐ向かってくださいね」と言われた。この辺りから、急ぎ??大丈夫??と、本格的な不安を感じ始めた。病院には科ごとの受付があり、検査もそれぞれ受付が必要だった。血液検査の受付は機械に診察券を読み取らせるだけで完了し、一蘭の味集中カウンターみたいなところで血を抜かれた。心エコー検査の受付は人間が行っており、検査室で心臓のあたりをグリグリされた。検査が完了したら再度循環器内科で受付をし、医師の診察を受けた。「うーーん、このまま緊急入院ですね!問題ないですか?」と言われ、「え、あ、はい。」と答えたところ、そのまま緊急入院となった。

入院中の生活

まず最初に COVID-19 の検査をし、数時間後に陰性の結果が出たことを確認してから入院処理が始まった。

病室まで移動し、看護師から入院の手続きや入院中の生活についての説明を受けた。いくつかの書類にサインをした後、入院に必要なものを揃えることにした。なにせちょっと病院に行って帰ってくるつもりの荷物しか持ってきていないため、病室で提供されるもの以外の生活用品がないのだ。入院病棟内にはコンビニがあり、そこで必要なものを買うことができた。ただ、これは退院するまでずっとそうだったが、不整脈で失神の恐れがあるため、病室のある階の外に出るときには必ず看護師や看護助手の付添で車椅子での移動をしなければならなかった。人に車椅子を押してもらって買い物をすることには少し申し訳なさを感じた。とりあえず生活ができるようになったことで、入院生活が始まった。

病室は6時に灯りがつき、22時に消灯する。朝と夕に体温、血圧、血中酸素濃度を測定する。食事は8時半、12時半、18時半の3回で、それぞれ時間になったらベッドまで運ばれてくる。入浴は看護師に申請することで30分間の利用ができるシャワー室を利用する。病室は4人部屋だがベッドを囲むようにカーテンで仕切りがされており、プライバシーは確保されている。前述の通り失神の恐れがあるため、トイレに行くときはナースコールを押して看護師に送り迎えをしてもらう。基本的な生活はこのようなものだった。検査の予定があれば朝の測定のときに看護師がそれを伝えてくれて、時間になったら検査室まで看護助手が送り迎えをしてくれた。それ以外はおおむねベッドの上で過ごしていた。眠っているか、本を読むか、ゲームやインターネットをしていた。たまに病室の近くにある、患者が利用できる休憩スペースにも行っていた。休憩スペースにはコンビニの移動販売もやってくるので、おやつの調達などはそこでしていた。

入院生活はかなり快適だった。朝が早すぎて軽い吐き気がすることが多かったが、検査以外にはやることもないので寝ていれば問題なかった。外ではちょうど大寒波がきていたらしいが、病棟はずっと適温で、長袖のパジャマがちょうどいいくらいの過ごしやすさで、空気の乾燥も感じなかった。食事も毎日食べるものとしては十分に美味しかったし、アレルギー以外にも食べられないものがあれば反映してくれた。病室の他の患者の存在にストレスを感じないか心配だったが、入院患者はだいたい病気の高齢者なので、動かないし騒がないしだいたい眠っており、思ったより静かで穏やかなに過ごすことができた。ただ、いびきがめちゃくちゃうるさいことだけは辛かった。また、これは入院生活で一番便利に思ったことだが、普段飲んでいる薬や必要な薬はすぐに処方された。病院なので当たり前だが、相談すれば処方薬がポンポン出てくるのは少し面白かった。いい機会なのでマイスリーを処方してもらったが、5mg錠を半量にしても吐き気がしたのですぐに服用を中止してベルソムラに戻った。

とにかく仕事もせずに日がな一日ベッドに横になっているだけの生活は良かった。命に関わる病気かもしれないことを除けば、のんびりできていいなと思っていた。あまりに暇すぎて積んでいた本を3冊くらい消化できた。自宅では色々なことに気を取られてしまうし、生活するための作業もたくさんある。それらがなければ本を最後まで読むくらいには集中力が保てるんだな〜という経験ができたのは良かった。

検査と診断

入院した翌日くらいに主治医がやってきた。話しぶりや印象が工学部にいそうな感じで、なんだか親近感が湧くいい先生だなと思った。主治医は現状で分かっていることや今後の方針を話してくれた。診療所の医師から聞いた通り、連発性心室性期外収縮が認められる場合には心臓の血管や筋肉に異常がないかを調べることになる。それぞれ冠動脈 CT 検査、心臓 MRI 検査で調べることができる。これらの検査で異常がなければ原因不明ということになり、命の危険は低くなる。原因不明で大丈夫なのか?とは思ったが、原因を特定するうれしさがないのだろうと思って勝手に納得した。冠動脈 CT 検査も心臓 MRI 検査も少し待たなければいけないので、だいたい2週間くらいの入院になる予定とのことだった。長引きそうですみません、と謝られたが、生命維持のためという最も正当な理由で2週間も休めるなんてうれしいです、と返答した。

冠動脈 CT 検査と心臓 MRI 検査を待っている間にも、色々な検査をした。さまざまな心電図検査が主だったが、特によく覚えているのが頸動脈エコー検査だ。首を機器でグリグリされるのが非常に気持ち悪かった。あまりの気持ち悪さに静かに泣いた。検査後にぐったりしている僕の様子を見て、技師が「私もこの検査されるのは嫌いなんですよね」と励ましてくれて、ああ技師も嫌いなくらい大変なんだな…と思うと落ち着くことができた。

入院の5日目に冠動脈 CT 検査をした。冠動脈 CT 検査は造影剤を点滴して行うが、その際にアレルギー反応が出ることが分かった。薬物でのアレルギーは初めてだったので、実在するんだな〜と感心した。幸いくしゃみがでる程度で、大事には至らなかった。その日の夜に主治医がやってきて、狭心症の可能性が無いことを伝えてくれた。

心臓 MRI 検査だが、検査に空きができたとかで予定よりも早く実施された。病棟の休憩スペースでクリームパンを買ってかばんに詰めていたところに医師がやってきて、「今から検査できるみたいなので行きましょう」と言われてそのまま連れて行かれた。心臓 MRI 検査でも造影剤を点滴するのだが、前回アレルギー反応が出たために病室で抗アレルギー薬の点滴を行ってから検査に行くことになった。僕はとにかく注射が苦手なので、点滴の時間が増えたことが辛かった。MRI の機械の閉塞感や作動音、結構長時間の息を止める指示もあり、頸動脈エコーの次に辛い検査だった。検査の翌日に主治医がやってきて、心筋症の可能性が無いことを伝えてくれた。

これらの検査の結果から、特発性非持続性心室頻拍という診断となった。特発性が原因不明であること、非持続性が30秒以内に期外収縮が治まること、心室頻拍が心室を原因とする期外収縮が3発以上発生すること、を表している。特発性・非持続性であれば生命予後は非常に良いとのことで、めでたく命の危機は去ることになった。入院当初は埋込み型除細動器の取り付けも視野に入れているとの話を聞いて覚悟はしていたが、一番マシなところに落ち着いてよかった。頻脈を抑える薬をしばらく服用して、様子を見て退院しましょう、ということになった。金曜日のことだった。

手術

診断がついたのが金曜日で、土日は病院が休みなので特に何もなく過ごす予定だった。ところが土曜日の夜に主治医がやってきて、改めて心電図を眺めていて期外収縮の様子がおかしいことに気づいたので追加で心臓カテーテル検査の実施を検討している、という話を聞かされた。様子がおかしいというのは、特発性心室頻拍というのは心臓の原因不明の異常箇所から予期せぬ信号が発せられることで期外収縮が発生しているのだが、通常はその異常箇所が一つであるために期外収縮の形状も一種類であるはずが、僕の心電図には三種類の期外収縮があるとのことだった。つまり、僕の心臓には通常一箇所であるはずの原因不明の異常箇所が三箇所あるということになる。主治医も見たことがない症例らしかったが、そんなに珍しいものを見せられてよかったし、これで先生の何かの成果になったらうれしいな、と思った。

「見たことがない症例」という事実の面白さに楽しくなってしまったが、心臓カテーテル検査というのがちょっと点滴して写真を撮るくらいでは済まない検査だった。足の付け根の血管に穴をあけてカテーテルを挿入し、心臓まで進めて血管の様子を観察するのだ。結構びっくりしたが、「全身麻酔ですか?」と聞いたところ「正確には麻酔とは違って鎮静剤というものなんですが、そういう認識で問題ないです。」とのことだったので、じゃあ寝てるだけだしまあいいか、と思った。「週明けに上司と相談して、具体的なことが決まったらお伝えしますね。」という、なんだか仕事みたいなことを言われた。いや、医師は職業なので仕事なんだけど、病院で言われたことがない文言が少し面白かった。

主治医がやってきたのは週明けの夜で、心臓カテーテル検査をするならついでにカテーテルアブレーション治療もやろうという提案があったので、検査のついでに手術をしようと思うがどうか?と伝えられた。というのも、カテーテルアブレーション治療というのは、足の付根の血管に穴を空けてカテーテルを挿入し、心臓まで進めて異常箇所を焼き切る手術らしい。確かに心臓カテーテル検査と途中まで同じ作業だし、ついでやれそうなことは理解できた。手術の有無で何か変わることがありますか?と聞いたところ、血管に開ける穴が3つから4つに増えます、とのことだった。誤差じゃん、と思ったので、手術を了承した。ただ、点滴についての心配があったので相談をした。実は同じ病室の患者がちょうどカテーテルアブレーション治療を行っており、手術前後の病室での様子を知っていたのだが、なんと前日から点滴の針を刺しているのを見てしまったのだ。点滴の針を刺したまま眠ることだけがどうしても怖くて、あれがどうにかなるかという相談をした。それなら起きてすぐに点滴の針を刺しましょうか、ということになった。相談聞いてくれるんだ、と思って安心した。手術と聞いて緊張もあったが、よく考えてみれば僕がやることといえば鎮静剤で眠ることだけで手術をがんばるのは先生なので、気にするべきことといえば注射の針くらいだな、と思った。

手術は3日後に予定通り行われた。相談通りに点滴の針は当日の朝に刺してもらった。看護師がやるのかと思いきや、たまに診察に来てくれていた医師がやってきた。注射の針が苦手ということを伝えると、採血で刺すようなところよりも端の、皮膚が少し厚いところで血管を探して針を刺してくれた。おかげで思ったより痛みも不快感もなかったので、いい先生だな、と思った。手術はいわゆる手術室ではなく、カテーテル室という部屋で実施された。部屋の様子もドラマで見るような手術室とは全く異なり、ディスプレイや機械がたくさんあって電気工学科の実験室を思い出した。「何かされる感」にはさすがに緊張していたが、鎮静剤を投与されるまでの作業がかなりテキパキしており、すぐに意識がなくなった。目が覚めたら病室のベッドに寝かされており、主治医がやってきて手術が無事に完了したことを教えてくれた。ただ、事前に説明されていたことだが、心臓の異常箇所のうち一つが発生させる期外収縮は発生頻度が低いことが分かっており、これは処置できなかったらしい。残りの二箇所は処置できたので、退院後にまた様子を確認してみましょう、となった。

これは余談だが、手術後には傷口が塞がるまで安静にしている必要があるが、食事は許可されている。ただし、傷口である足の付け根を動かさないために体を起こすことができない。そのため食べ物を串で刺して口に運ぶことになっていたのだが、なんとその日の夕食はビーフシチューだった。ギャグじゃん、と思って笑ってしまった。食事を運んできた看護師も笑っていた。サラダのレタスなど食べられそうなものだけ食べて、残りは体を起こせるようになったら食べた。手術後の患者も同じ食事なんだ、と思った。

退院後

手術後の経過に問題がなかったため、入院16日目にめでたく退院となった。2週間もお世話になった看護師や看護助手のみなさんとのお別れは少しさみしかったし、さみしい気持ちが生まれるくらいにはよくしてもらったと感じた。

手術からしばらくは結果を正確に判断できないため、1ヶ月後に次の診察を受けた。血液検査と心電図検査を行ってから久しぶりに主治医の診察を受け、合併症が発生していないことや心電図に問題のないことを確認した。次に、手術の結果症状がどう変化したのか?を確認するためにホルター心電図検査が実施された。診療所を受診したときはホルター心電図検査の機器を取り外したその日の夜に電話があったが、今回は予約した診察の日まで特に連絡もなかったため、ひとまず安心した。

ホルター心電図検査の結果、カテーテルアブレーション治療で処置をした異常箇所のうち一つは期外収縮の発生が止まっており処置が成功したことが分かったが、もう一つは期外収縮を発生させていることが分かった。というのも、この一つは心臓の外側に位置しており、カテーテルアブレーション治療では効果が出るか分からないものだった。処置は試みたが、結果は失敗だったらしい。これを確実に処置したければ心臓の外側から焼く必要があるが、これは大変にリスクのある手術になるため、今の症状を見る限りリスクを上回る利益は得られないだろう、とのことだった。最終的に、これと手術中に発見できずにカテーテルアブレーション治療で処置ができなかった残り一つの異常箇所を含めても、引き続き投薬治療を続けていく方針で問題ないという判断になった。また、薬によって期外収縮の間隔を大きくできそうなので、薬の量を増やすことになった。そもそも期外収縮のなにが問題かというと、心臓の収縮が非常に短い間隔で連続して繰り返されることで、心臓が十分な血液を送り出せないことである。心臓が十分な血液を送り出せなければ脳に血液が回らなくなり、意識を失い、最悪の場合死に至る。収縮の間隔を大きくしてそういった状況を避けるため、十分効果のある量での薬の服薬を続ける必要がある。

おわりに

そういうわけで持病と薬が一つ増えたものの、命に別状はない。よかったですね。

ただ一つだけ、交感神経を高める作用が期外収縮を誘発してしまうためにストラテラをはじめとする ADHD の治療薬が禁止になってしまったことが、とにかく辛くてたまらない。日中は眠いし過集中はひどいし特に理由もなく気力がなくなることが増えた。どうしてそんなにピンポイントで相性の悪い病気にかかってしまったのかと、この世の不条理を感じつつ、今日も強く生きています。

おまけ

入院した次の週に行く予定だったライブに参加できなくなって悲しくなっている様子

病院の飯に感動している様子

手厚い保護の様子

健康意識を高めた様子

規則正しい音に喜んでいる様子

入院8日目にしてはじめて病院のベッドが動くことに気づいた様子

病院の安心感に気づいた様子

病院の動くベッドを欲しがっている様子